代わり映えしない日常

平々凡々な日々の覚書

【小説】鑑定人 氏家京太郎

ミステリー作品において、主に物語を引っ張っていくのは刑事や探偵と呼ばれる人たちである。

たまに大学教授であったり、学生であったり、他の職種のいわゆる一般人でこともある。

物語が展開するうえで重要な科学的根拠を示す科学者や法医学者は縁の下の力持ちであることが多い。

最近はそういう職種の人たちがメインである作品も増えてはきているが、ミステリー作品の中では少数派だと思う。

しかし、私はそういう職種の人たちが主人公の作品を読むのが大好きなのだ。

 

本作の著者である中山七里さんの『特殊清掃人』に読んだときにチラリと出ていた鑑定人の氏家さんに興味をもった。

中山作品といえば、キャラクターたちが作品を越えて交流関係をもつことが多いので、調べてみたら氏家さんが主役の話を見つけた

それがこの『鑑定人氏家京太郎』だった。

 

凶悪な連続殺人事件があり、容疑者が逮捕された。

しかし容疑者は2つの事件の犯行は認めているが、3つめの事件の犯行は否認している。

容疑者の弁護士から協力を求められた氏家は、自分の持つコネクションを駆使し、科学的事実によって、真相に迫っていく。

 

読了後、一番最初に思った感想は「面白かった」

組織、立場、人間関係の対立が絡み合っていて、最初はめんどくさいって思った。

やはり主人公側に感情移入するので、対立する方の人物に対してイライラした。

けれど主人公をはじめ、主要人物たちがみんな感情で動くのではなく、冷静に理論で動く人たちなのが大変私好みだった。

なんというか足を引っ張る人、大騒ぎし過ぎる人がいないのって、事件解決へと最短距離で動いているので、ストレスがかからない。

それでも紆余曲折、想定外の展開がいくつもあり、その都度ドキドキしたけれども納得のストーリー展開だった。

真相については、物語中盤にある事実を提示された時点で「あっ、たぶんこいつが犯人」って思ったのが当たっていたので、謎解きとしては比較的容易なのか。

もしくは著者からの必要な情報の提示がうまいのか。

シリーズ化希望作品。

 

鑑定人 氏家京太郎

著者:中山七里

出版社:双葉社